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AIは、消えていくベテランの技を残せるか|製造業22年の私が考える技能継承(後編)

前編では、製造業の現場で「ベテランの技が消えていく」という問題について書きました。

教える時間がないまま、技術を持った人が定年を迎えていく。音や材料の感触といった「言葉にできない技術」は、マニュアルにも残せない。すべてを言語化できれば、技術を細分化して誰でも担えるようになるけれど、その言語化作業があまりにも膨大で、現実的じゃない——。

そんな矛盾の前で、私はずっと立ち止まっていました。

でも今、私はひとつの構想を持っています。後編では、その具体的な中身を書いていきます。「こうすれば、ベテランの技を残せるんじゃないか」という、私なりの設計図です。

目次

私がつくりたいもの:現場で相談できるAIアプリ

先に、私の構想をはっきり書きます。

私がつくりたいのは、現場でタブレット1つで相談できる、チャット形式のアプリです。

新人が作業中に「この音、大丈夫かな?」「この曲げ方で合ってる?」と思ったとき、その場でアプリに話しかける。すると、ベテランの代わりにAIが「それはこういう状態です」「こうするといいですよ」と答えてくれる。ベテランがいなくても、ベテランの知識に相談できる。そんな仕組みです。

前編で「言語化できれば、技術を細分化して誰でも担える」と書きました。このアプリは、まさにそれを形にするものです。言語化したベテランの技術を、アプリの中に蓄えておく。新人や研修生は、それにいつでも質問できる。

どうやって作るのか:3つのステップ

「そんなアプリ、素人に作れるのか」と思いますよね。私もプログラミングなんてできません。でも、調べてみて分かったんです。今は、コードが書けなくても作れる時代になっていました。

私が考えている手順は、3つです。

ひとつ目は、技術の言語化。ベテランに作業のコツを聞いて、AIに整理してもらう。これは前編の終わりでも触れた、AIが得意な作業です。録音した話を渡せば、手順書の形にまとめてくれます。

ふたつ目は、その言語化した内容を、AIに覚えさせること。集めた技術メモやマニュアルを、AIツールに読み込ませます。

みっつ目は、それをチャットアプリの形にすること。ここでも、プログラミングは要りません。専用のツールが、ノーコード(コードを書かないこと)で用意されています。

具体的に使えそうな2つのツール

私が今、注目しているツールが2つあります。どちらも、コードを書かずに使えます。

ひとつは、Googleの「NotebookLM」です。これは、自分がアップロードした資料だけを根拠にして、質問に答えてくれるツールです。しかも、答えの出どころ(どの資料のどこに書いてあったか)まで示してくれる。いい加減なことを言わないんです。ベテランの技術メモを読み込ませて、新人が質問する、という使い方にぴったりです。無料で始められて、スマホアプリもあります。まず試すなら、これが一番手軽です。

もうひとつは、「Dify(ディファイ)」というツールです。こちらは、もう少し本格的で、自分専用のチャットボット(自動で会話するAI)をノーコードで作れます。作ったものは、タブレットやスマホで使える形にもできる。私が思い描いている「現場で相談できるアプリ」に、より近いのはこちらです。

私の考えている道筋はこうです。まずNotebookLMで「技術メモを入れて質問する」を試してみる。手応えがあったら、Difyで本格的なアプリに育てていく。いきなり完璧を目指さず、小さく試してから広げる。前編の記事でも書いた「一回で完璧を求めない」やり方です。

正直に言うと、まだ課題もある

いいことばかり書くのはフェアじゃないので、正直な課題も書きます。

ひとつは、前編でも触れた「音」や「感触」そのものは、まだデータにしにくいということ。AIに渡せるのは、あくまで言葉にできたものです。「こういう音がしたら、こういう状態」と言葉で説明することはできても、音そのものを覚えさせるのは、今の私にはまだ難しい。ここは、これからの課題です。

もうひとつは、機密性です。会社の技術は、大切な財産です。どのツールに、どこまでの情報を入れていいか。これは慎重に考える必要があります。調べた限りでは、NotebookLMは入力した情報がAIの学習に使われない仕組みになっているなど、配慮されている部分もあります。ただ、実際に会社の技術を扱うなら、きちんと確認してから進めるべきだと思っています。

それでも、私はやってみたい

課題はあります。まだ構想の段階で、私自身、これから実際に作ってみるところです。だから「これで技能継承は完璧に解決する」とは言えません。

でも、です。

「言語化したいけど時間がない」という、あの長年の矛盾。「コードが書けないから、アプリなんて無理」という思い込み。その両方に、AIが風穴を開けてくれる。少なくとも、挑戦する価値はある。そう本気で感じています。

消えていくはずだったベテランの技が、AIの力を借りて、少しでも次の世代に残せたら。一人にしかできなかった仕事が、細分化されて、新人や研修生にも担えるようになったら。人手不足に悩む現場が、ほんの少しでも楽になったら。

そんな未来を、私はこのブログで追いかけていきます。これから実際にツールを触りながら、分かったことを正直に書いていくつもりです。うまくいったことも、つまずいたことも、全部ここに記録していきます。

ベテランの技を、消さないために。AIという新しい道具と一緒に、現場のためにできることを、これから探していきます。

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